マウスピース矯正は痛い?痛みの原因と我慢できない時の5つの対処法をプロが解説
マウスピース矯正に興味はあるものの、「マウスピース矯正は痛いのでは?」と不安に感じている患者さまは少なくありません。ワイヤー矯正より痛みが少ないと聞く一方で、実際に装着した方の体験談を見て心配になることもあるでしょう。
結論からお伝えすると、マウスピース矯正でも痛みを感じることはありますが、その多くは一時的で、我慢できないほど強いケースは多くありません。痛みの理由を正しく理解し、適切に対処することで、矯正治療は無理なく続けることが可能です。本コラムでは、マウスピース矯正が痛いと感じる主な原因と、我慢できないほど痛いときの具体的な対処法を歯科医師の視点からわかりやすく解説します。
▼マウスピース矯正が痛い原因は?
◎歯が動くことによる圧迫感・鈍い痛み
マウスピース矯正の痛みで最も多いのが、歯が動くことによる違和感や鈍い痛みです。歯は、顎の骨の中で「新しい骨を作る細胞」と「骨を壊す働きをする細胞」がバランスを取りながら移動します。この過程で歯の周囲に圧力がかかるため、装着直後や新しいマウスピースに交換した直後に痛いと感じやすくなります。特に歯が動き始める最初の数日間は、締め付けられるような感覚が出やすい傾向があります。
◎新しいマウスピースへの交換直後
マウスピース矯正では、一定期間ごとに新しい装置へ交換します。新しいマウスピースは、次の段階へ歯を動かすために設計されているため、交換直後は圧が強くなり、痛いと感じることがあります。ただし、この痛みは歯が順応していくことで徐々に落ち着き、数日以内に軽減することがほとんどです。
◎マウスピースが歯茎や粘膜に当たる
マウスピースの縁が歯茎や口の中の粘膜に当たることで、ヒリヒリした痛みが出る場合もあります。特に歯茎が敏感な方や、装置の縁がわずかに合っていない場合に起こりやすい症状です。このタイプの痛みは、歯そのものではなく、口の中の粘膜が刺激を受けることで生じます。
◎装着時間が足りていないことによる痛み
マウスピース矯正は、決められた装着時間を守ることが非常に重要です。装着時間が短いと歯の動きが安定せず、再装着した際に強い圧がかかり、痛みを感じやすくなります。「外している時間が長かった後に痛い」という場合は、装着時間不足が原因の可能性があります。
◎噛み合わせの変化による違和感
矯正治療が進むにつれて噛み合わせが変化し、一時的に特定の歯だけに力が集中することがあります。その結果、食事の際に痛みを感じたり、違和感が出たりすることがありますが、これは噛み合わせが調整されている過程で起こる一時的な症状であることが多いです。
▼マウスピース矯正が痛いときの対処法は?
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新しいマウスピースは夜から装着する
マウスピース矯正で痛いと感じやすいタイミングは、新しい装置へ交換した直後です。これは、歯にかかる力が次の段階へ切り替わるためで、治療上避けられない反応といえます。そのため、新しいマウスピースは就寝前から装着することをおすすめします。
睡眠中は会話や咀嚼がなく、無意識のうちに装着時間を確保できるため、圧に慣れやすくなります。結果として、装着初日の違和感や痛みを最小限に抑えやすく、翌朝には「思ったより大丈夫だった」と感じる患者さまも少なくありません。
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装着時間をしっかり守る
痛みがあると、ついマウスピースを外したくなるものですが、装着時間が不安定になると、かえって痛みが強くなることがあります。これは、歯が十分に動ききらない状態で再び強い力が加わるためです。
マウスピース矯正は、一定の力を継続的にかけることで歯を安全に動かす治療法です。決められた装着時間を守ることで歯の移動が安定し、余計な圧や痛みを感じにくくなります。結果として、治療全体の負担軽減にもつながります。
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歯茎や粘膜が痛いときは歯科医院へ相談
歯そのものではなく、歯茎や口の中の粘膜が痛い場合は、マウスピースの縁が当たっている可能性があります。このような痛みを我慢し続けると、歯茎に炎症が起きやすくなり、口内環境が悪化する原因にもなります。
歯科医院では、マウスピースの縁をわずかに調整することで、痛みが改善するケースが多く見られます。患者さま自身で削ったり調整したりせず、早めに専門家へ相談することが安全で確実な対処法です。
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柔らかい食事を選ぶ
マウスピース矯正中に痛みが強い時期は、歯に過度な負担をかけないことも大切です。無理に硬いものを噛むと、歯や歯茎への刺激が増え、痛みが長引くことがあります。
一時的に柔らかい食事を選ぶことで、歯への負担を軽減でき、痛みの悪化を防ぎやすくなります。多くの場合、数日で違和感は落ち着くため、「今は無理をしない」という判断も、治療を継続するうえで重要なポイントです。
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痛みが続く場合は治療計画の確認を
数日経っても痛みが改善しない、あるいは我慢できないほど強い痛みが続く場合は、治療計画そのものを確認する必要があります。歯の動かし方やマウスピースの適合状態によっては、力のかかり方を調整したほうがよいケースもあります。
歯科医師が現在の歯の状態を確認し、必要に応じて計画を微調整することで、無理のない矯正治療が可能になります。自己判断で治療を中断せず、違和感や痛みは必ず相談することが、安心してマウスピース矯正を続けるための大切なポイントです。
■まとめ
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正と比べて痛みが少ないといわれる治療法ですが、歯が動く以上、まったく痛くないわけではありません。多くの場合、痛みの正体は歯が順調に動いているサインであり、一時的なものです。装着時間を守る、新しいマウスピースは夜から使う、歯茎の痛みは早めに相談するなど、正しい対処を行えば、我慢できないほどの痛みになることはほとんどありません。マウスピース矯正で「痛い」と感じたときこそ、自己判断せず歯科医師と相談しながら進めることが、安心して治療を続けるための大切なポイントです。