部分矯正10万円で痛みが少ないは本当?安さだけでは治らないリスクも解説
歯並びが気になるけれど「費用が高そう」「痛みが心配」といった理由で、矯正治療に一歩踏み出せない方は少なくありません。最近では「部分矯正10万円」「痛みが少ない」といった広告を目にすることも多く、気軽に始められるイメージを持つ方も増えています。しかし、本当にその価格と痛みの少なさだけで治療を選んで良いのでしょうか? 本コラムでは、部分矯正がなぜ痛みが少ないと言われているのか、そして安さや痛みの少なさばかりを重視することによる落とし穴について、歯科医師の視点からわかりやすく解説していきます。
▼10万円の部分矯正の痛みは少ない?
はじめに、10万円の安価な部分矯正なら痛みが少ないのでは?という疑問にお答えします。
◎部分矯正は痛みが少ない傾向がある
部分矯正は、歯並び全体ではなく前歯や一部の歯に限定して動かす治療です。そのため、動かす歯の本数が少なく、矯正力も弱めに設定されることが多いため、一般的に「痛みが少ない」と言われるのです。例えば、全体矯正では上下の歯列全体を移動させるため、歯根膜や骨にかかる圧力が大きく、痛みや違和感を伴いやすいのに対し、部分矯正は限られた範囲での調整となるため、比較的軽度の痛みで済むケースが多いのです。とりわけ10万円の部分矯正となると、やれることが極めて少ないことから、痛みも少なくなる傾向があります。
◎痛みの少なさは個人差が大きい
ただし、「痛みが少ない」と言っても個人差があります。たとえ一部分の矯正であっても、歯の移動量が大きい、あるいは歯の根の向きや骨の厚みによっては、痛みを強く感じる方もいらっしゃいます。特に、もともと歯並びに大きな乱れがあり、無理に部分矯正で対応しようとすると、かえって不自然な力がかかり、強い痛みが出ることもあります。
◎痛みの少なさだけで治療を選ぶのはよくない
「痛みが少ないから」「短期間で終わるから」といった理由で部分矯正を安易に選ぶと、期待通りの結果が得られないリスクもあります。治療の目的は「見た目」だけでなく「噛み合わせ」や「機能性」の改善も含まれているべきです。部分矯正は確かにメリットの多い治療ですが、適応症を見極め、長期的な予後まで考慮した上で選択することが重要です。
▼部分矯正に安さ・痛みの少なさを優先することの危険性
◎費用の安さに潜む落とし穴
「10万円で矯正できる」と聞くと、多くの方が飛びつきたくなるのも無理はありません。しかし、費用が安く抑えられている場合、その分、使用する装置の質が劣っていたり、治療範囲が極端に狭かったりすることもあります。また、追加費用が発生するケースもあり、結果として想定以上の出費になる可能性もあるのです。
さらに、「部分矯正」であっても、診断や治療計画が不十分であれば、見た目は整っても噛み合わせに不具合が残ることがあります。たとえば、前歯だけがキレイに並んでも、奥歯の噛み合わせに不調があるままだと、再び前歯がズレてしまう「後戻り」のリスクが高まります。
◎安価な矯正=簡易治療ではない
部分矯正が安価で提供されている背景には、治療計画がシンプルで、比較的短期間で終わるという側面があります。しかし、それはすべての患者さまに当てはまるわけではありません。噛み合わせや歯並びのバランスは人それぞれ異なり、10万円の簡易的な治療で対応できるケースは限られています。
治療の精度や仕上がりを重視しないと、見た目は整っていても、しっかり噛めない、顎関節に違和感があるといった不調を引き起こすリスクがあるため、安さだけで判断するのはおすすめできません。
▼部分矯正でも歯並び・噛み合わせを治せることが大切
◎見た目だけでなく「噛める」ことも重要
矯正治療を希望される患者さまの多くは、まず見た目の改善を求めて来院されます。しかし、歯並びを整える目的は「見た目」だけではありません。歯列の乱れは、噛み合わせの不良、虫歯や歯周病のリスク増加、発音障害、顎関節症など、さまざまなトラブルの原因になります。
当院では、部分矯正であっても歯の位置と噛み合わせのバランスを丁寧に診断し、必要に応じて全体的な治療への移行もご提案しております。
◎適応症の見極めが成功のカギ
部分矯正が向いているのは、軽度の歯列不正に限定されます。例えば、前歯の軽いねじれや、隙間の閉鎖などは部分矯正の範囲内で対応可能です。しかし、歯並びのズレが大きい場合や、顎の骨格的な問題があるケースでは、部分矯正で満足な結果を得るのは難しいでしょう。
そのため、安易に「10万円で済むから」「痛くなさそうだから」と自己判断で治療を選ぶのではなく、まずは信頼できる歯科医院でカウンセリングを受け、自分に合った治療法を見極めることが大切です。
◎当院の部分矯正では、噛み合わせまでしっかり治療
当院では、部分矯正をご希望の患者さまにも、全体のレントゲン撮影、噛み合わせのチェック、模型による分析を行い、噛み合わせを含めた治療計画を立案します。見た目の美しさとともに、しっかり噛めることを両立することを目標にしており、再治療や後戻りのリスクを最小限に抑えた矯正治療を提供しています。また、治療後のリテーナー(保定装置)も適切にご案内し、長期的に安定した歯並びを維持するためのサポートも行っています。
▼まとめ
「部分矯正10万円」「痛み少ない」といった広告のキャッチコピーは、確かに魅力的に映ります。しかし、費用や痛みの有無だけを重視して治療を選ぶと、結果的に思ったような効果が得られなかったり、再治療が必要になったりすることもあります。部分矯正は決して簡易な治療ではなく、適応症を見極めた上で、噛み合わせまで考慮した精密な治療が求められます。当院では、見た目の美しさだけでなく、しっかりと「噛める」ことも重視した部分矯正を行っております。矯正治療をご検討の患者さまは、ぜひ一度、専門的なカウンセリングを受けてみてください。安全で確実な治療計画を立てることが、後悔のない矯正治療への第一歩です。